リーダーになりたいなら

私のところに相談に来るビジネスマンには、同僚や部下、顧客からの「リーダーとしての評価」を知りたい、という人が多数いる。理想を言えば、実際の仕事仲間同士でディスカッションを行い、思い切って正直に、互いの印象について、どの部分を向上できそうかなどをアドバイスし合うのがいいだろう。

たとえばリーダーへの評価が、英語のスキルが弱い、プレゼンテーションが下手、顧客とのミーティング中に鼻をほじる無作法(実際にそんな評価を受けたクライアントがいた)なら、取り組むべき課題は明らかだ。しかし評価がもっと曖昧な場合も多い

たとえば、コミュニケーションをもっと明瞭に。もっときびきびと。もっと熱意を見せて。何があっても動揺しないで。もっと創造的に。細かい部分と長期的な大局のバランスを考えて、など。評価を受ける側も、自分が取り組みたい指摘とそうでないものをより分ける必要がある。

この時点で、より意識したトレーニングができるようになる。意識することで、仕事の半分は終わったようなものだ。本当のことを突かれると、心がざわつく。そうした激しい感情が生まれたときこそ、私たちは学習し、態度を決め、行動を調整できるのだ。評価は対面式でなくても、書面でもいいし、匿名でもいい。早い段階で、理想のリーダー像を定義しておくのもいいだろう。リーダーのアイデンティティ、価値観、基準に望むことは?会社を望ましい方向へ導くには、どんな戦略が最良と考えるか?

周囲からどんなリーダーと思われたいか?あなたの最も重要な仕事は?

自分が目指すリーダー像をしっかりと考える作業は、理念と現実のギャップを埋める作業でもある。私が関わった例をひとつ挙げよう。

もっと強気なリーダーになりたいと願う女性クライアントに、小さなステップに分けてセッションを行った。まずは、次回の会議では大きな声で話し、大きな身振りをまじえるようにアドバイスした。部下へはっきり伝えるのが目的ではない。そうすることで、自信が強まるからだ。その次の会議でも同様のことを意識しながら、賛成できないことがあれば部下から遠慮なく反対の声を上げてもらうよう指示した。すでに押しが強くなっているのと、状況を前もって想像しているため、ひるまなくなっていたのだ。

三度目の会議では、数人の参加者が賛成しないとわかっていることを、あえて提案させた。このときのポイントは、前もってフォローアップの回答と、批判や疑惑への反論を一字一句準備してもらうことである。

加えてクライアントには、自宅で毎日、「私は押しが強く、タフで、歯に衣着せぬ、自信にあふれた正真正銘のリーダーだ」と、自分に言い聞かせてもらった。さらに、新たなイメージを体現するような画像を、携帯電話の待ち受け画面に設定してもらった。どういう状況だと強気に出られるのかについて、何度も話し合った。

彼女は徐々に、自分に資質があると確信できるようになった。カウンセリングで、強気な態度を取る技術を磨く訓練も行った。孤独を感じるリーダーは多い。だから、さまざまなテーマや問題を話し合うだけで、目の前がクリアになり、安心が得られるのだ。

多くのリーダーにとって貴重な存在となるのが、不満を分かち合える外部の人間や、友好的に議論できるパートナーである。それはたとえば、友人、前の会社の同僚、メンターや、私のようなメンタルトレーナーである。

リーダーにとって、社会性は、仕事をする上で非常に重要な資質である。あらゆるタイプの人間とつきあい、各自の任務に意欲を出させるためには、社交的なスキルが必要だ。従業員のやる気とコミットメントを高め、それを維持させるために、どんな「スイッチ」を押せばいいのか。リーダーは、そのことを常に考えなければならない。あらゆる部下の士気を高められるリーダーは、ビジネスに甚大な競争力を持たせることができる。

今の時代、成功するために最も大切な要素は人材である。特許、テクノロジー、情報の優位は、急速に消えつつある。最良の会社とそれ以外を分けるのは、競争力のある人材を確保し、成長させ、効率よく活用できるかだ。人を育て、動かす力という点で、リーダーの担う責任は大きい。部下に影響を与えたい、方向性を修正してパフォーマンス力を押し上げたい、と思うなら、メンタルトレーナーになったつもりで働きかけるべきだ。彼らの感情に訴えかけること。感情を揺さぶらなければ、変化をうながすことはできない。

おすすめの記事